外国人スタッフの相談窓口はどうつくるか
「困ったら何でも相談してね」。入社初日にこう伝えても、相談は来ないことがあります。来ないのは、困っていないからとは限りません。窓口は、言葉でなく形でつくるものです。
窓口がないと、困りごとはどこへ行くか
相談の場所がない職場では、困りごとは3つのどこかに行きます。
- 黙って抱える → ある日、退職の形で見える
- 同じ国の仲間だけに話す → 宿は気づかないまま、不満が育つ
- SNSや外部に話す → 宿が知らないところで話が進む
3つとも、宿にとって重い形です。小さな困りごとは、小さいうちに出してもらったほうが軽いのです。
特定技能1号の受け入れでは、相談・苦情への対応は支援計画の義務項目です。義務でない資格の人でも、窓口の形は同じように効きます。
あなたの宿では、いま困りごとが3つのどこに行っているでしょうか。見当がつかないなら、窓口が形になっていないサインです。
窓口は3つの部品でできる
窓口というと「相談室」を想像するかもしれませんが、部品は3つで足ります。
部品1:人(誰に話すか)
部品2:時間と場所(いつ、どこで話すか)
部品3:経路(話したあと、どうなるか)
3つが揃うと、「相談してね」が使える形になります。1つずつ作ります。
部品1:人は「2人+外」
担当は1人にしません。1人にすると、その人が休みの日に相談が止まり、その人が辞めると窓口ごと消えます。
形はこうです。
- 社内の担当:2人(主と副。部署が違うとよい)
- 社外の経路:登録支援機関(委託している場合)、監理団体、ハローワークの外国人雇用相談窓口、地域の国際交流協会
言葉が不安でも、担当になれます。翻訳アプリ、多言語の資料、外部の通訳サービスを使う形で回している宿があります。大事なのは、 完璧な日本語でなく、「話したら聞いてもらえる」ことです。
部品2:時間と場所は「決まっている」
「いつでも声かけて」は、使われにくい形です。決まっている時間があると、使われます。
- 月に1度、十5分。面談の枠としてシフトに入れる
- 毎週◯曜日の休憩時間、◯◯さんが休憩室にいる
- 初回の3者面談(本人・担当・支援機関)を入社1ヶ月目に置く
場所は、他の人に聞こえないところです。休憩室の隅では、話せないことがあります。事務所の1室、または歩きながらの形でもよいです。
部品3:経路は「3行で伝える」
相談したあとに何が起きるかを、先に伝えておきます。3行で足ります。
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• 聞いたことは、担当の2人だけが知る
• 宿として動くときは、本人に相談してから動く
• 安全に関わるときは、宿が先に動く(本人にも伝える)
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3行があると、「相談したら話が広まる」の不安が減ります。不安があると、何も来ません。
窓口を「使う練習」を初日にする
窓口は、伝えただけでは使われないことがあります。初日に1度、使う形を1緒にやります。
- 担当の2人を、名前で紹介する(顔と名前が結びつく)
- 相談の時間の最初の1回を、その場で決める
- 1回目の相談で聞くことを、こちらから用意する(「住んでみて困ったことは?」「バスの時刻はわかった?」)
1回目の相談が済むと、2回目からのハードルが下がります。最初の1回は、宿の側が作るものです。
相談が来たあとの動き
窓口は、受けたあとの形で信頼になります。
1. 聞く:解決を急がず、最後まで聞く。メモを取る(本人に見せながら取ると安心されます)
2. 記録する:日付、内容、約束したことを1枚に残す。記録は担当の2人だけが見る形にします
3. 期限を伝える:「来週の水曜までに、返事をします」。その場で答えられない相談には、答える日を決めます
4. 返す:決めた日に返事をします。答えが「いまはできない」でも、返事があることが信頼になります
5. 仕組みに返す:同じ相談が2回来たら、宿の側の形を直します(掲示、マニュアル、シフト)。2件目は、仕組みの穴のサインです
あなたの宿で相談を受けたことがある人は、この5つのうちいくつをやっていますか。「聞く」だけで止まっているなら、次は「期限を伝える」を足すだけで形が変わります。
相談が少ないのは、よいサインとは限らない
窓口を作ったあと、相談の数を1度見てください。
- 月ゼロが続く → 使われていない可能性があります。初回の練習をしたか、担当が機能しているかを見ます
- 同じ人から何度も → その人の困りごとが仕組みになっていないサインです
- 生活の話ばかり → 仕事の相談の出し方が、別にあるとよいかもしれません
数は、窓口の健康の目安です。ただ、数だけで評価すると、担当が「相談を減らす」方向に動くことがあります。減らすのではなく、小さいうちに出る形がよい形です。
自館の改善に向けて今日できること
社内の担当2人の名前を、紙に書いてみてください。 書けたら、その2人に「月に十5分、相談の枠を持つ」ことを伝えて、来月のシフトに入れます。
2人が決まらないなら、社外の経路を1つ調べるだけでも1歩です。委託先の登録支援機関に相談対応があるか、地域の国際交流協会に相談窓口があるか。1つ見つかれば、社内が決まるまでの橋になります。
いま外国人スタッフがいない宿でも、窓口の3つの部品は先に作れます。作ってある窓口は、最初の人が入った日から使えます。