OJTとは何か・旅館でどう回すか
OJTは、宿でよく使われる言葉です。ただ、「何ですか」と聞かれると、答えは人によってバラバラです。この記事は、定義を置いてから、旅館での回し方に入ります。
OJTとは何か
OJT(On-the-Job Training)は、職場訓練のことです。定義の3要素を置きます。
• 実務の中で学ぶ:練習のための時間でなく、本物の仕事の流れの中で学びます
• 仲間が教える:外の講師でなく、職場の人が教えます
• この宿の仕事を学ぶ:1般的な知識でなく、あなたの宿のやり方が内容です
職場を離れて学ぶ訓練(外の研修、座学)とは、別の道具です。どちらが上かでなく、役割が違う形です。宿の仕事の大部分——客室の整え方、お迎えの形、この宿の時間帯——は、職場でしか学べません。だから宿では、OJTが学びの中心になります。
OJTの誤解:3つ
誤解の1:「見て覚えろ」がOJT
見せるだけで、やらせず、返事もしない形は、OJTでなく放置です。OJTには、やった人の手に仕事が入るまでの形が要ります。
誤解の2:手の空いた人がやるもの
教える人を決めない形では、教えは気が利く1人に集まります。集まった1人が先に疲れる形は、OJTの失敗でなく、置かれ方の失敗です。人と時間は、決めて置きます。
誤解の3:新人だけのもの
学びは、キャリアの段階ごとに続きます。2年目の人にも、リーダーになった人にも、その段階の仕事のOJTがあります。新人のOJTだけを見る宿では、上の段の学びが空になります。
回し方:4つのステップ
OJTは、4つのステップの繰り返しで回ります。1回のサイクルは、1つの仕事です。
• やって見せる:仕事を段に分けて、1度やって見せます。台本はマニュアルです
• 1緒にやらせる:本人の手を動かします。失敗しそうな場所に、手を添える形です
• 1人でやらせて、見る:見える距離で見守ります(近づきすぎず、離れすぎずの距離は 『新人が雑談に入れないとき』と同じ理屈です)
• 返す:よかった点を1つ、直す点を1つ、言葉で返します
4番を飛ばす宿が多い形です。返事のないサイクルは、本人に「合っているのか分からない」を残します。あなたの職場の教えに、4番は入っていますか。
旅館のOJT:3つの特徴
宿の仕事には、OJTの回し方に効く特徴が3つあります。
• 山と谷がある:チェックイン・チェックアウトの山では、教えられません。「見せる」と「返す」は谷の時間に置きます(谷の時間の使い方は、シフトの設計の話です——『先輩スタッフに教える負担をかけすぎない方法』)
• お客様の前では、やり直せない:失敗がそのままお客様の経験になります。お客様から遠い仕事から、近い仕事へ——順番に上げます
• 手が覚える仕事がある:客室の整え、お膳の運び——言葉にしにくい部分が残ります。だからこそ「やって見せる」と「同行」に意味があります
3つの特徴は、OJTを難しくするのではありません。回す場所と順番を教えてくれます。
教える人の3つの支え
現場リーダーがOJTで疲れないために、3つの支えが要ります。
• 台本:マニュアル。台本があれば、教える人は「思い出しながら」でなく「確かめながら」教えられます
• 時間:教える時間をシフトに置く形。時間の裏づけのないOJTは、好意の上で回ります
• 相手:1人に集めない形——バディ、メンター。小さな宿でも、「教える人」を分けて置けます
3つの支えは、教わる人のためでなく、教える人のための形です。支えのないOJTは、続かないことがあります。
小さな宿のOJT
5人の宿でも、OJTは回ります。制度は要りません。
必要なのは、1つの仕事、1人の同伴、1回の返事——3つの行だけです。3つの行が紙に書かれた宿では、OJTはもう始まっています。
無理なく続けられる現場の工夫
1つの仕事を選んで、「今週、誰にやって見せるか」を決めてください。
- 選んだ仕事の4つのステップ(見せる→1緒にやる→見て→返す)を、紙に3行で書いてください
- 見せる時間を、谷の時間に置いてください
- 返す時間を、同じ日のうちに置いてください
OJTは、制度からでなく、1つの仕事と1枚の紙から始まります。あなたの職場の次の1枚は、今日書けます。