繁忙期を乗り切ったあと・宿には何が残るのか
繁忙期が終わる。売上の数字はよかった。ただ、宿の中には、数字に出ないものが残ります。残ったものを数えられる宿と、数えない宿で、次の年の人が変わります。
数字に出るものと、出ないもの
繁忙期のあとに残るものを、2つに分けます。
数字に出るもの
- 売上と利益
- 稼働率
- 口コミの数と評価
数字に出ないもの
- スタッフの疲れの残り方
- 辞めた人、辞めようと思った人の数
- 教えられなかった新人の育ち
- 後回しにした設備と書類
- 「もう1度やれるか」という感覚
数字に出るものは、会議で話題になります。出ないものは、誰も集計しないので、話題になりません。
あなたの宿では、繁忙期のあとの会議で、下の5つのうちいくつが話題になりますか。1つもならなければ、5つは全部、そのまま宿の中に残っています。
2つの宿を比べてみる
同じ規模の2つの宿が、同じ繁忙期を乗り切ったとします。
宿A:乗り切ったあと、何もしない
- 休みは次の月から通常に戻る
- 振り返りは「おつかれさま」で終わる
- 疲れた人ほど、次の繁忙期に同じ場所に入る
- 辞めた人の穴は、次の求人まで埋まらない
宿B:乗り切ったあと、3つだけやる
- 忙しかった人に、平日の連休を1度入れる
- 3十分だけ、「次に変えたいこと」を集める
- 集まった中から、1つだけ次の繁忙期までに直す
1年あと、2つの宿は何が違うでしょうか。
宿Aでは、繁忙期が「耐える期間」として記憶されます。耐える期間があると、人は転職を考えます。考える人は、次の繁忙期の前に辞めます。
宿Bでは、繁忙期が「終わったあとに楽がある期間」として記憶されます。楽があると、人は次の年もいます。
差は、繁忙期の売上ではありません。終わったあとの3週間でつきます。
疲れは、繁忙期中には見えない
疲れている人は、繁忙期中は動きます。アドレナリンのようなもので、体が持つことがあります。
見えなくなるのは、終わったあとです。
- 繁忙期明けの月に、欠勤が増える
- ミスが増える
- 口数が減る
- 有給の申請がまとまって出る(出ない宿もある)
この4つは、繁忙期の請求書です。請求書は、繁忙期のあとに届きます。
繁忙期中に「大丈夫か」と聞くのは、実はあまり効きません。聞かれても「大丈夫です」と答えるからです。効くのは、終わったあとに休みを渡すことです。
残るものの中で、いちばん重いのは「人」
5つの残るものの中で、金額にすると重いのは人です。
繁忙期のあとに1人辞めると、次の繁忙期までに採って育てる必要があります。育てる時間は、前の記事で見たように、採用コストより大きくかかることがあります。
ただ、辞めなかった人の疲れも同じくらい重いです。辞めない人は、数字に残りません。残らないので、見えないまま次の繁忙期に入ります。
次の繁忙期に、同じ人が同じ疲れ方をすると、2度目は1度目より重くなります。疲れは積み上がります。 積み上がったあとに来るのは、退職届か、病欠か、静かな諦めです。
3つのうちどれが来るかは、人によって違います。どれが来ても、宿は困ります。
振り返りは「悪かった探し」にしない
宿Bの3十分の振り返りで、気をつけたいことがあります。
「何がよくなかったか」から入ると、反省会になります。反省会は、疲れた人のあとには重すぎます。
入りの問いは、こうです。
- 「今回、助かったことは何でしたか」
- 「誰かの動きで、楽になった場面はありましたか」
- 「次もやりたいことは何ですか」
3つとも、よかったものを探す問いです。よかったものが出ると、場が持ちます。持ったあとで、1つだけ「次に変えたいこと」を聞きます。
変えたいことは、十も2十も集めません。集めても直せないからです。 直せない列表ができると、次回から誰も言わなくなります。
1つだけ直す、が次の採用につながる
宿Bが集めた「変えたいこと」から、1つだけ選びます。選ぶ基準は3つです。
- 次の繁忙期までに間に合うか
- お金が大きくかからないか
- 現場の人が「変わった」と言えるか
例を挙げます。
- 洗濯物の動線を変えた → 1日3十分短くなった
- 朝食の1品を仕込みに移した → 朝の人数が1人減らせた
- インカムのチャンネルを分けた → 呼び出しが減った
3つとも、小さな変更です。ただ、現場の人が変化を言える形です。
言える変化があると、次の繁忙期の前に辞める人が減ることがあります。減った人は、そのまま次の繁忙期を回す力になります。繁忙期のあとの1つの変更が、次の繁忙期の採用人数を決めることがあります。
日常の業務の中で意識したいこと
直近の繁忙期を1つ思い出して、「終わったあとに何をしたか」を3行で書いてみてください。
3行書けたら、その3行があなたの宿の「繁忙期のあと」です。休みのこと、振り返りのこと、直したことが入っていれば、宿Bの形に近いです。
何も書けなかったら、次の繁忙期が来たときに、終わったあとの3週間だけ予定を空けておいてください。3週間の中に、連休と3十分と1つの変更を入れる。それだけで、残るものが変わります。