ハラスメントは誰にでも起きる・外国人材の受け入れで特に注意したいこと
ハラスメントは、悪い人がいる職場だけの話ではありません。構造があると、普通の人の職場でも起きます。そして、起きたことが見えにくい形があります。経営の目で、構造と見えにくさの両方を見ます。
なぜ経営の課題なのか
ハラスメントは、個人の傷つきで終わりません。宿の経営に3つの形で返ってきます。
- 人の損失:傷ついた人が辞める。教えた時間と採用の費用が消える
- 現場の損失:見ている人も働けなくなる。空気が固くなり、声が減る
- 外側の損失:評判は口コミと採用に乗る。「あの宿は」という話は、業界の中で速く広がります
3つを金額にすると、予防のコストより重い形になります。予防は、3つの損失を買わないための投資です。
あなたの宿では、ハラスメントの話は「起きない前提」になっていませんか。前提の宿ほど、起きたときの動きが遅れます。
受け入れの文脈で、起きやすい4つの構造
外国人材の受け入れでは、次の4つの構造が重なりやすいです。構造は、誰かの性格でなく形の話です。
構造1:力の差が3つ重なる
立場の差(指導する側・される側)に、言葉の差と在留の差が重なります。在留の更新が宿の書類にかかっている人は、「言えば更新に影響するのでは」と考えることがあります。この考えがある間は、声が出ません。
構造2:職場が小さい
5人、十人の宿では、相談できる相手と加害者とされる人が同じ部屋にいます。逃げ場が物理的に少ない形です。
構造3:冗談の積み重ね
「外国人だからわからないよな」の1言は、1回なら冗談の範囲のことがあります。ただ、繰り返されると、居場所を削る形になります。削られている側は、冗談の枠では声を上げにくいものです。
構造4:生活が宿の上にある
寮に住み、宿の車で通勤し、給与が宿から出る形では、「辞めたら住む場所もなくなる」が頭にあります。この状態で「嫌だ」と言うのは、生活ごと懸ける形です。言えないのは、弱さでなく構造です。
4つのうち、あなたの宿に重なっているものはいくつありますか。1つでもあるなら、見えにくさの前提で仕組みを作ります。
見えにくい理由:声が遅れる、または出ない
ハラスメントの相談は、起きた直後に来るとは限りません。3つの形で見えます。
- 声が遅れる:半年あと、退職の理由として出る
- 声が出ない:突然の帰国、更新の拒否の形になる
- 声の場所が違う:宿でなく、支援機関やSNSに出る
3つとも、宿の内部の窓口が機能していないサインです。相談がゼロの職場は、安心の職場とは限りません。出せない形の職場のことがあります。
経営が作る予防の4つ
1. 方針を、経営者の名前で言う
「ハラスメントは許さない。相談しても不利益な扱いはしない」。この2行を、経営者の言葉で、朝礼と掲示で伝えます。担当者の名前でなく経営者の名前であることが効きます。言葉の重さが、場所の高さで決まるからです。
2. 相談の道を、2つ以上作る
宿の中と、宿の外(登録支援機関、監理団体、ハローワーク、労働局の相談窓口)。外の道があることを本人が知っている形にします。外の道を隠す宿は、本人に見抜かれます。見抜かれると、中の道も使われなくなります。
3. 研修で、線の場所を渡す
全員研修で、聞いてよいこと・言わないことの線を渡します。線は「配慮」でなく作法として渡すと、現場に馴染みます。管理する立場の人には、構造1〜4を1度見せます。構造を知っている管理者は、冗談の1回目で止められます。
4. 対応の形を、先に決めておく
起きたときの動きを、起きる前に決めます。決めていない宿は、起きたときに人の感情で動きます。感情の動きは、あとから「不公平だった」と見られます。
起きたときの動き:経営の判断が要る3つ
現場のリーダーは「聞いて、記録して、渡す」までです。経営の判断が要るのは3つです。
- 分離:同じシフトに入れない形を、いつから作るか
- 認定:何が起きたかの判断。難しいケースは、社会保険労務士や労働局に聞きます。宿の中だけで認定を抱えない形が安全です
- 再発防止:措置(配置、指導、規程の変更)と、チームへの伝え方
3つとも、速さより形が大事です。速い判断が間違えると、取り消しは2段重くなります。
注意が1つあります。加害者と見られる側が外国人スタッフのこともあります。その場合も、手順は同じです。国籍で手順を変えた瞬間、公平性は消えます。
やらないほうがよい3つ
- 「冗談だった」で終わらせる:言った側の意図でなく、受けた側の形で判断します
- 「文化の違い」で片付ける:差別的な言動は、文化の説明では消えません
- 相談した人に不利益を返す:シフトを減らす、配置を変える(本人の希望でない形)。不利益を1度返すと、次の相談は来ません
最初の1歩としての小さな実践
相談の道を、紙に2行書いて、休憩室に貼ってください。(宿の中の窓口の名前/外の窓口の名前と電話番号)
貼る前に、方針の2行(許さない・不利益にしない)を上に足します。2行は、経営者の名前入りです。
掲示が1枚できたら、次の朝礼で3十秒だけ読みます。読んだ事実は残るので、「伝えた」が宿の記録になります。記録がある宿は、万1のときに「予防をやっていた」と言えます。言える形は、経営を守ります。